東京都西多摩郡日の出町に、70年の歴史を持つ認可外保育施設「自然保育 森の幼児園」がある。小学5年生で東京都青梅市に引っ越して以来、西多摩エリアになじみのある印南幸恵さんは、一般社団法人紡ぐ手の代表として現在この園の運営に携わっている。本記事では、印南さんが保護者として森の幼児園と出会い、どのような経緯で運営に携わるようになったのかをひも解いていく。
野外保育が充実!森の幼児園
「自然保育 森の幼児園」は、戦後の青空保育から始まった歴史ある保育施設だ。園舎は道路から離れたくぼ地に位置し、上には幸神神社(さちかみじんじゃ)が鎮座。すぐ下には緩やかな平井川が流れ、周囲には生き物あふれる里山が広がる。
特筆すべきは、1日のほとんどを外で過ごす野外保育中心のカリキュラム。週1回の近隣のお山登り、梅雨明け後の毎日の川遊びなど、子どもたちは自然の中で季節を肌で感じながら過ごしている。
園の「厳しさ」にも心惹かれた
2011年、長男出産後に離乳食教室を主催していた印南さん。その縁で「大久野幼稚園 森の教室」(当時)の見学に訪れる。
「もともと野外教育に興味があったわけではないんです」と印南さん。「でも、子どもたちの様子がとにかく生き生きしていて。すごくのびのびとした姿に惹かれました」
しかし、印南さんの心を捉えたのは野外保育だけではない。園の「厳しさ」にも魅力を感じたという。
「みんな思い思いに遊んでいるのに、先生が『皆さん』と声をかけると、すぐに止まってバッと集合する。自由なのに規律がある。この園はほかの園とは違う、そう思いました」
その印象が決め手となり、印南さんは長男、そして後に次男も入園させることになる。
息子たちがたくましく成長していく
実際に通わせてみると、週1回の「お山の日」や夏の川遊びといった自然との触れ合いを通じて、子どもたちの急速な成長を目の当たりにする。
「些細なことなんですが、自然の中から大切なことを学んでくる。もともと生き物が苦手だった私には教えられないようなことを、息子はちゃんと覚えて帰ってくるんです」と印南さん。長男は今や中学1年生。自ら標本を作るほど虫が大好きになった。
園の「厳しさ」は次男の成長にも影響を与えた。運動会では跳び箱や逆上がり、一輪車など、園児には難しそうな競技も行う。そんな中、次男が年長のときに見せた姿に印南さんは驚く。
「102回の空中逆上がりをやってのけたんです。諦めない強さを初めて見て、本当にびっくりしました」
今の時代によくある「何でも許す」教育とは一線を画し、「嫌でもまずはやってみる」「駄目なものは駄目」としつけを厳しくするのが園の方針だ。印南さんは、「今の時代だからこそ失ってはいけない、自分でやりきる力を学ばせることができた」と力強く語る。