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【後編】あきる野市で発達に援助がいる子どもを支援|立石 駒子さん

東京都あきる野市にてハンディキャップを持つ子どもたちへの支援を行う立石駒子さんに、地域の障がい福祉の課題についてもおうかがいしました。
後編となる本記事では、あきる野市の自立支援協議会に参加している立石さんに、障がい福祉ではどのような取り組みが行われているか、また、具体的にどのような支援が足りていないのか取材した内容をお伝えします。

目次

地域における障がい福祉を話し合う 

写真1:困っている人の声に耳を澄ませる

―立石さんは「mama はぐ」の代表としてあきる野市の自立支援協議会に参加しています。あきる野市自立支援協議会ではどのような活動を行っているのですか。 

まず、自立支援協議会というのは全国に市区町村単位で設置されていて、地域における障がい者の課題について話し合う場です。あきる野市自立支援協議会には四つの部会がありそれぞれ、こども部会、くらす部会、そうだん部会、そして、はたらく部会です。

私は、こども部会とくらす部会に参加しています。くらす部会というのは、18 歳以上の障がい者について話す部会のことです。 

―地域の障がい福祉サービスにおいて、特に障がい児をとりまく課題にはどのようなものがありますか。 

障がい福祉サービスを受けるために、評価・計画を立ててくださる「相談支援専門員」の数が不足しています。近年は、相談支援専門員の専門領域が高齢者介護といった、障がい児以外の場合が増えています。障がいのある子どもがどのような障がい福祉サービスを受ければよいか、障がい児を専門としていない相談支援専門員に相談しているので、適切なサービスを探してもらえないという状態です。 

―適切な障がい福祉サービスにたどり着きにくいという課題があるのですね。続いて、障がい福祉サービスのなかでは、特にどのような支援が足りていないのですか。 

障がい福祉サービスは、いずれのサービスも不足していて、良いところを選んだり、潤沢に利用できない状況です。特に課題としてよく上がるのは、移動支援です。移動支援というのは、一人での外出が困難な障害を持つ方が外出するときに、ヘルパーの手伝いを受けながら移動をサポートしてもらえるサービスです。どの事業所もヘルパーの数がとても少なく、我が家でも月に 1 度も利用できていません。 

子どもが小学生までであれば、行政が提供するファミリー・サポート・センター(ファミサポ)を利用することができます。私も息子を特別支援学校から学童に送迎してもらうときに利用していました。利用料は安くはありませんが、送迎サービスが足りない場合は頼るほかありません。 

しかし、中学生以降はファミサポも利用することができなくなります。代替となる移動手段がないことは、ハンディキャップを持つ子どものいる親にとって悩みの種です。 

写真2

―立石さんは学童を利用していたのですね。送迎をお願いする場合、学童に入るのは大変なのでしょうか。

我が家の場合は、息子が健常のお子さんたちと交流する機会を増やすために学童を利用していました。ところが、学童は居住地区に限定されているため、特別支援学校が異なる地域にある場合、送迎が困難になります。そういった事情があり、地域の学童クラブへ通うことはあきらめ、学童の代わりに 18 歳まで利用可能な放課後デイサービスを検討せざるをえないという方がほとんどです。 

放課後デイサービス
支援の必要な子どもへの発達支援や集団活動を通した、家と学校以外の居場所づくりを目的としたサービスのこと。

―ファミサポでは、専門知識を持っていなくても送迎のボランティアにかかわることができるのですね。発達の支援がいる子どもの送迎のボランティアは、ファミサポ以外ではできないのでしょうか。 

障がい特性への理解や、送迎中の事故が発生した場合などを考えると、難しさがあると思います。ファミサポの方々は研修制度などを設けて下さっており、とても信頼できます。しかし、育成してくださる分提供会員が限られてしまい、なかなかマッチングできずに利用が広がらないのが現状です。ボランティアを行う方に向けた保険などが整備されて希望する方だけでもボランティアの方に助けていただけるような仕組みが出来たら嬉しいですね。 

ファミリー・サポート・センター(ファミサポ)
地域における子育てまたは介護の支援を目的とし、自治体から委託等を受けた団体が運営している。「援助を受けたい人(依頼会員)」と「援助を行いたい人(提供会員)」が会員となり、ファミサポが提供会員を教育することで育成し、地域で相互援助活動(有償)を行う。

―立石さんは学童の話のなかで、「ハンディキャップの有無にかかわらず子どもたちが交流してほしい」とおっしゃいましたが、実際にはどのような壁があるのでしょうか。 

私たちは、子どもであっても大人であっても、自分の余暇時間などに友達と遊びに行ったり自由に交流できます。ところが、障がいをお持ちの方のなかには、誰かの見守りや手助けがないと出かけることすら出来ない方もいます。おまけに、ヘルパーも獲得できないとなると、助けられるのは親だけです。ハンディキャップを持つ子どもには放課後デイサービスがありますが、18 歳以上になると、仲間で集まる機会が格段に減ります。子どもが出かけられる場所がないのは、親御さんにだけでなく子どもにとっても、常に家族と過ごさなくてはならないという精神的な負担になります。 

あきる野市自立支援協議会のくらす部会でも、「子どもが余暇を過ごす場がない」という課題が毎回のように上がっています。 

さらに、先ほどの学童の話にもつながりますが、放課後デイサービスや家族会などで、ハンディキャップを持った子ども同士の交流の場はあっても、健常の子どもとの交流の場がごく限られています。 

小さな頃から学校も分けられてしまい、障がい児だけのコミュニティで過ごすことしかできず、そのまま大人になる方がとても多いのが現状です。 

交流の機会については、新たに、地域の有志の方が「あきる野able」の活動支援を行っていただくことになったり、「アートどころpomme」のワークショップの開催や運営を手伝ってくださることになりました。 子どもが余暇を過ごせるようにと応援してくださる方々が地域で広まっていく手ごたえを感じています。これからも、地域の障がい福祉に携わる方々や、ボランティアの方々とともに、発達に支援のいる子どもが、誰もが、生きやすい地域にしていければと思っています。

写真3

【プロフィール】
 立石 駒子(たていし・こまこ) 
発達に援助を必要とする子の親の会「mama はぐ」代表。2024 年1月より、「mama はぐ」とは別の新規事業として、 障がいの有無にかかわらず誰もがアートを楽しむことができる場としての「アートどころ pomme」を開催する。

(2023年12月 インタビュー 足立愛子)

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この記事を書いた人

ライター、インタビュアー。国際基督教大学(ICU)卒業後、NECへ入社。政策渉外部へ配属され、中央省庁を顧客とし、国家予算を使った大規模プロジェクトの調整役として関与。その後、人材開発サービス事業部へ移動し、研修企画や運営設計に携わる。2022年に品川区から『東京山側』へ移住し、兼ねてからの夢であったライターへと転身。都内研修企業オウンドメディアの記事執筆、地域新聞社での記事執筆、NPO広報誌の記事執筆、『東京山側』で地域課題解決に従事する方へのインタビューなどを行っている。

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