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常識にとらわれない発想で救助業界に旋風|八櫛 徳二郎さん

「八櫛会」全国に広がる

――消防士としての活動以外にも、プライベートで減災・防災の活動をしていたそうですね。

消防士3年目として働いていた21歳のとき、勉強会を立ち上げ、仲間とともに救助活動の学術的な研究を始めました。研究を重ねるうちに、自然と人が集まってきて、勉強会は八櫛会と呼ばれるようになりました。

勉強会では毎年学会などで発表していたこともあり、勉強会の立ち上げから4年ほどで、日本中から質問を受けるようになっていきました。最初は個別に答えていたのですが、勉強会を作って定期的に集まって意見交換するかたちにした方が良さそうだなと思い、全国向けに勉強会を立ち上げました。全国的な勉強会にしようということで、2006年にホームページを作ったり、翌年にはメーリングリストを作ったりしました。2008年には、震災救助の訓練会「CSRMベーシックコース」(CSRMは、Confined Space Rescue & Medicineの略。狭隘(きょうあい)空間における救助・救急・医療活動)を開催しました。レスキュー隊員のために、勉強会で研究してきた内容を披露するというのは日本で初の取り組みでした。

CSRMの救護服

――代表的な研究と、どのように進めていたのかを教えていただきたいです。

救助担架の設定角度に関する研究をしていました。救助の現場では、担架を使ってケガ人を低いところから上げるときに、頭を足よりも高くなるようにしていました。ところが、救急車に引き継ぐと、救急隊は足を頭より高くして運んでいきます。救助と医療の現場で方法が異なっていて、疑問に思いました。調べたところ、内臓が問題なくても、外傷があり血圧が下がっている人は、頭に血液が行きにくい状態で脳の機能が止まってしまい、死んでしまいます。ショックと呼ばれる現象です。つまり、ケガをしている人の頭を上げるのは禁忌で、足を上げて、足の血液を頭に送るくらいの処置をしなくてはならない。しかし、救助の世界では、頭を少し高くするのが一番安全だと言われていました。

なぜ救助の世界では頭を高くするようになったのか、歴史をたどってみました。人間は上半身が重いため、担架をまっすぐ水平に作っていると、人を乗せたときに頭が下がってしまう。それゆえ、担架を作るときに少し足が下になるように下ろして、人を乗せたときに水平になるようにしているのだと分かりました。要するに、細かいことは考えられてなかったんですよ。そこで、研究内容を臨床救急医学会などの医学会で発表して、裏付けを取って職場に戻しました。その結果、現在では、担架には水平な状態で乗せ、頭に血液が足りてない状態(ショック状態)になってしまったら、可能な範囲で足を高くするといった救命処置が救助隊でも行うことがほぼ当たり前になりました。

――臨床救急医学会で発表するというのもプライベートの活動なんですか。

個人の活動です。もちろん、職場(本庁)には、こういうことを発表しますと許可を取ります。研究内容が外部から評価されれば、職場も納得してくれて、そういう必要性があるのだったら変えていかないといけないかなという風にだんだんなっていきました。

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この記事を書いた人

ライター、インタビュアー。国際基督教大学(ICU)卒業後、NECへ入社。政策渉外部へ配属され、中央省庁を顧客とし、国家予算を使った大規模プロジェクトの調整役として関与。その後、人材開発サービス事業部へ移動し、研修企画や運営設計に携わる。2022年に品川区から『東京山側』へ移住し、兼ねてからの夢であったライターへと転身。都内研修企業オウンドメディアの記事執筆、地域新聞社での記事執筆、NPO広報誌の記事執筆、『東京山側』で地域課題解決に従事する方へのインタビューなどを行っている。

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